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キャンプマットには3つの種類があります。
インフレーター、エアマット、クローズドセル。
売り場では厚さと値段で比べたくなりますが、この3つは寝心地ではなく仕組みが違います。 そして仕組みが違うぶん、暖かさの出方も、壊れ方も違います。
判断の基準になるのが R値 という数字です。ただしこの数字には、知らずに比べると間違える落とし穴があります。
なぜマットが重要なのかは別記事に書きました。この記事はその続きです。
目次
R値とは「熱の伝わりにくさ」
R値は Thermal Resistance(熱抵抗値) の頭文字です。
熱がどれだけ伝わりにくいかを表す数字で、大きいほど断熱性能が高い。マットの場合は「地面に体温を奪われにくい」ことを意味します。
目安はこうです。
| R値 | 使える季節 |
|---|---|
| 1前後 | 夏でも地面が冷たい日は厳しい |
| 2前後 | 夏向け |
| 3〜4 | 春・秋 |
| 4.8 | 寝袋の温度表記が前提にしている水準 |
| 5以上 | 冬 |
4.8という中途半端な数字は、寝袋の国際規格 ISO 23537 の試験条件です。寝袋に書かれた快適温度は、この水準のマットがあって初めて成立します。
本題:2020年まで、R値はメーカー間で比較できませんでした
ここが落とし穴です。
R値の測定方法が統一されたのは、比較的最近のことです。
それ以前は、各メーカーが独自の方法で測っていました。 同じ会社の製品どうしなら比べられる。しかし別の会社の製品と並べても、厳密には比較になりません。
これを解決したのが ASTM F3340 という規格です。2019年に策定され、2020年ごろから各社のカタログに載るようになりました。 アメリカの大手アウトドア店REIが、自社で扱うマットにこの表示を必須としたことで、業界全体に広がっています。
つまり、こういうことです。
「R値6.0」と「R値5.0」を比べていいのは、両方がASTM F3340で測られているときだけ。
古い製品や、測定方法を明記していない製品の数字は、同じ土俵に乗っていない可能性があります。
商品ページに 「ASTM F3340」 の記載があるかどうか。ここを見る癖をつけると、数字の意味が変わってきます。
3つのタイプ
R値の読み方がわかったところで、構造の違いを見ます。
| インフレーター | エアマット | クローズドセル | |
|---|---|---|---|
| 中身 | ウレタン+空気 | 空気のみ | 発泡樹脂 |
| 断熱 | ◎ | △ | ○ |
| 寝心地 | ◎ | ◎ | △ |
| 収納 | ○ | ◎ | ×(かさばる) |
| 壊れ方 | 穴が開くと終わり | 穴が開くと終わり | 壊れない |
| 準備 | バルブを開けるだけ | 空気を入れる | 広げるだけ |
インフレーター:最初の1枚に向く
バルブを開けると、中のウレタンが復元しながら自動で空気を吸い込みます。
断熱と寝心地のバランスが最も良いタイプです。ウレタンが入っているぶん、空気の対流が抑えられて熱が逃げにくい。
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公称R値6.0。 前述の4.8を上回っているので、寝袋の表示温度が成立する前提を満たします。厚さ8cm、190×65cm、2.5kg。
エアマット:厚くても暖かいとは限らない
ここがいちばん誤解されるところです。
空気を入れて膨らませるタイプで、軽くて、小さくまとまって、寝心地も良い。 数字だけ見れば理想的に思えます。
ところが断熱では不利です。理由は対流——袋の中の空気が、温かい側から冷たい側へ動いて熱を運んでしまうからです。
厚いほど中の空気の層が大きくなるので、対流も起きやすくなります。 「厚い=暖かい」が成立しないのは、このためです。
初心者がやりがちな失敗
厚さ10cmのエアマットと、厚さ8cmのインフレーターマット。厚いほうが暖かいはずだと考えて、10cmを選ぶ。 寝てみると実際ふかふかで、寝心地も良い。
ところが秋になると、背中だけが冷える。
寝心地と断熱は、別の性能です。 空気だけの層は、厚くなるほど内部で対流が起きて熱を運びます。ウレタンが入った8cmのほうが、空気の動きを止めるぶん暖かい。
「厚さ」で選ぶと、この違いが見えません。 見るべき数字はR値のほうです。
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エアマットの代表として挙げますが、この記事の基準に照らすと注意点があります。
商品ページにR値の記載がありません。 これはこの製品に限った話ではなく、エアマット全般に多い傾向です。断熱を売りにしていないカテゴリだからとも言えます。
高さ40cm、シングルで約6.9kg。バッテリー式のポンプを内蔵していて電源が要らないのは実用的な利点です。ただしソロキャンプの積載には重く、寒い時期の断熱も期待できません。
向いているのは、夏のキャンプ、電源のある場所、そして来客用です。商品名にも「来客用」とあります。季節と用途を絞れば良い道具ですが、「厚いから暖かいだろう」で買うと外します。
クローズドセル:壊れない
発泡樹脂を成形したもので、銀マットや折りたたみ式がこれにあたります。
R値は控えめですが、このタイプにしかない強みがあります。
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公称R値2.0、183×57cm、厚さ2.4cm、435g。単体では夏向けの水準です。
強みは3つあります。
穴が開きません。 空気を使うマットは、パンクしたらその夜が終わります。クローズドセルにその心配はない。
準備がいりません。 広げるだけ。設営で疲れているときに、これは効きます。
重ねられます。 これが本題です。

重ねるという選択肢
R値は、重ねるとおおよそ足し算になります。
これを知っていると、選び方の幅が広がります。
| 組み合わせ | 合計R値 | 使える季節 |
|---|---|---|
| クローズドセル単体(2.0) | 2.0 | 夏 |
| インフレーター単体(6.0) | 6.0 | 冬まで |
| クローズドセル+インフレーター | 8.0 | 真冬も |
3シーズン用のマット(R値3〜4)しか持っていない場合も、下にクローズドセルを1枚敷けば5.0〜6.0になり、寝袋の前提である4.8を超えられます。買い替えるより安い。
そして順番があります。地面側にクローズドセル、体側にインフレーターです。硬いほうを下にすると、地面の凹凸や小石から上のマットを守れます。
選び方のまとめ
1枚だけ買うなら、インフレーター。 断熱と寝心地のバランスが最も良く、準備も楽です。
エアマットは、季節と用途を決めてから。 軽さと収納性は本物ですが、断熱は期待できません。
クローズドセルは、2枚目として持つと効く。 単体では夏向けですが、重ねる・保険にする・座布団にする、と応用が利きます。
そして数字を見るときは——
- R値が書いてあるか
- 書いてあるなら、ASTM F3340に基づくか
- 4.8に届いているか
この3つです。
秋以降は、そもそも予報の気温より現地のほうが冷えます。 マットの数字と合わせて読んでおくと判断が早くなります。
なおマットは「R値が書いてある製品」を選ぶと、どうしても価格が上がります。 単価が上がるほど、買う時期をそろえる価値も上がります。
まとめ
- R値は熱抵抗値。大きいほど地面に体温を奪われにくい
- 2020年ごろまで、R値はメーカー間で比較できなかった。統一したのが ASTM F3340
- 「R値6.0」と「5.0」を比べていいのは、両方が同じ規格で測られているときだけ
- インフレーター=バランス型。最初の1枚に向く
- エアマット=厚くても対流で熱が逃げる。厚さと暖かさは別
- クローズドセル=壊れない、準備不要、重ねられる
- R値は重ねると足し算。地面側に硬いほうを敷く
- 寝袋の表示温度が成立する水準は R値4.8
道具のカタログには数字が並びますが、その数字がいつ、どの方法で測られたかまで見ると、比べていいものと比べられないものが分かれます。
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最後にひとつ伺わせてください。あなたのマット、R値は書いてありましたか? よければコメントで教えてください。